新進気鋭のM&A仲介会社であるペアキャピタル。国内のみならず、海外にも事業所を開設し、M&A仲介をクロスボーダーで進めていこうとしています。2024年には台湾に駐在員事務所を設立し、事業をスタートさせました。台湾駐在員事務所の所長として、両国をまたぐM&A支援をしているアソシエイトの辻浦弘道さんにお話をうかがいました。
[プロフィール]
辻浦弘道さん
都立高校を卒業後、台湾の國立彰化師範大學に進学。管理学部企業管理学科にて学士号を取得し、卒業後は同じく台湾の國立成功大學に進学。管理学部企業管理研究所にて修士課程を修め、2023年に修士号(MBA)を取得。卒業後は学生時代に培った知識を活かしつつ台湾と関わる仕事に就きたいと考え、2023年11月にペアキャピタルに新卒入社。現在は台湾駐在員事務所の代表として台湾現地で活動している。
目次
――どのような経緯でペアキャピタル台湾駐在員事務所の所長となったのですか?
大学院を修了後、SNSで私の経歴を見たペアキャピタル代表の田中に声を掛けられ入社に至りました。
私は大学生のころから留学生として台湾で学んでおり、日本の経済学部経営学科に相当する企業管理学科を卒業後、修士課程を修めて2023年に修士号(MBA)を取得しました。しかし、就職については当時あまり真剣に検討しておらず、先のことを考え始めた矢先にこのような機会が訪れ、これも縁だと思い入社を決めました。
入社の決め手となったのは、田中の人柄の良さや、ペアキャピタルの朗らかな雰囲気に魅力を感じたほか、ゼロから新しい事業所を立ち上げるというミッションに面白みを覚えたことです。M&A仲介はおろか、社会人経験すらもない状態でしたが、ぜひとも挑戦してみたいと思いました。
――なぜ台湾に留学したのでしょう?
台湾への留学は、高校生のときに家族旅行で行ったことがきっかけとなりました。自然の美しさや人々の親切さに魅せられて、ここで生活をしてみたいと感じたのです。
日本と台湾には、特別な絆があると思っています。台湾で長く生活しているひとりの日本人として、これからもこのつながりを強化し、更に日台間の接点を広めていくための活動ができればいいと考えています。
――台湾駐在員事務所はどのように開設したのですか?
そもそも私にとって、M&A仲介の仕事自体が全くの未経験でした。そのため、まずは社内の先輩方に業務の内容について教えていただき、それと並行する形で台湾の商習慣や文化を踏まえた駐在員事務所設立のためのロードマップを作成しました。
駐在員事務所のパートナーとなる現地の弁護士や会計士とのリレーション構築も行い、合計4か月ほどかけて準備を進めていきました。
――現在、台湾駐在員事務所ではどのような活動をしているのですか?
駐在員事務所を開設した4月末から、さっそく現地での活動をスタートしました。2024年8月現在はまだ成約案件こそないものの、相談は多数寄せられています。その内容は多岐にわたり、会社を売りたいという方はもちろんのこと、日本の会社を買いたいという投資家や各種ファンドからも相談を受けています。
――台湾ではM&A仲介のニーズは多いのでしょうか。
潜在的には非常に多いです。日本ではあまり知られていませんが、実は台湾も日本と同じような高齢化社会に突入しており、経営者の高齢化が進んでいます。つまり、事業承継を課題としている企業が多数存在しているのです。
しかし、台湾にはM&A仲介を専門とする企業がほとんど存在しません。会計士事務所がサポートするケースもありますが、彼らはM&Aの専門家ではないため、きめ細やかなサービスを提供することは難しいのが現状です。そのため、ペアキャピタルの台湾進出は、潜在する事業承継の問題を一手に請け負うチャンスだと考えています。
――日本の営業所とはどのように連携するのですか?
台湾の企業が日本の企業を買いたい場合、あるいは日本の企業が台湾の企業を買いたい場合に、それぞれ候補先を紹介しあうことで、案件を進めていくことができます。
日台間におけるクロスボーダーのM&Aが盛り上がりを見せている中でペアキャピタルが日台を繋げる役割を担うことで、今後ますます日台間におけるビジネスの活性化に寄与できると信じています。
――台湾でM&A仲介事業を展開することの面白さや難しさについて教えてください。
台湾では一般の方はもとより、経営者であっても「M&A」という単語をご存知ない方がとても多いです。
そのため、M&Aという3文字を出した瞬間にいかがわしい業者だと思われてしまうことが少なくありません。しかし対面で話をしながらM&Aとは何か、どのような問題を解決し得るのかを説明し、そのうえで「本当に良いものだと納得してもらえたら、改めて提案させてください」とお伝えしています。一方的にこちらから価値観を押し付けるのではなく、相手の気持ちを考えながらお話しするように常に心掛けています。
すると、相手も自社の持つ課題を開示してくれたり、「辻浦さんのおかげでいいことを知れたよ。また来てね」とおっしゃってくださったりするため、次のチャンスに繋がっていきます。
――台湾の商習慣にはどのような特徴がありますか?
良くも悪くも同族意識が強い環境なので、コミュニティの中にいるか外にいるかで相手への対応が大きく異なる場合があります。ですから、相手の輪のなかに入れてもらえるように、信頼を構築していくことがとても大切です。一緒に食事をしたりお酒を飲んだりすると本音を話してくれることがあるので、ビジネスの話だけでなく人間対人間としての関係を構築できるよう心掛けています。
――台湾駐在員事務所の今後の目標を教えてください。
「台湾制覇」ですね。台湾で「M&Aといえばペアキャピタル」と思ってもらえるように市場を作り上げていきたいです。そのためには、そもそもまだM&Aが何かをご存知ない台湾の経営者の方々にM&Aという手段があることを知ってもらわなくてはなりません。今後も、台湾におけるM&Aの普及活動を愚直に進めていきます。
――今後、ペアキャピタルに入社して海外駐在勤務をしてみたいと考えている方へのメッセージをお願いします。
世界には、まだまだM&A仲介業を必要としている国が沢山あるはずです。M&Aによって助けられる企業や、成長できる企業も、世界中にまだまだ沢山あると考えています。
まずは東アジアが中心になると思いますが、ペアキャピタルでは海外展開をさらに進め、クロスボーダーのM&Aをより身近なものにしていきたいと考えています。
ただ、日本のM&A仲介事業者で海外展開をしている会社はまだ非常に少なく、台湾においても業務は手探り状態で進めているところもあります。各種書類の発行から公的機関への申請に至るまで、一つひとつ調べながら進んでいく形となるので、不確実な状況を楽しめる方やゼロから何かを作り上げることが好きでたまらない方には、魅力的な環境であると感じています。このような挑戦を楽しめる方は、ぜひ入社を検討してみてください。
――M&A仲介業務を海外で展開するうえで大切なことはどのようなことでしょうか。
多くの人が最初に思い浮かべるのは語学力だと思うのですが、実際には人間力の方が重要です。M&A仲介は、相手が何に困っていて、何をしたいのか。今どのような気持ちでどういう言葉を掛けられたら嬉しいか等の複雑な感情を適切に汲み取り、受け止めることが最も大切だと思っています。
そのうえで、さらにその国が好きであること、その国の言葉が話せること、そしてM&Aの知識を正しく身につけており、それを他者に適切に伝えられることが求められるでしょう。
The Deals編集部
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