2022年に設立されたByside株式会社。中堅中小M&Aの現場で「買い手特化のアドバイザー」という立場でありながら、案件情報のプラットフォームを構築する、これまでになかったユニークな事業を手掛け、急成長を遂げています。アドバイザーとは、売り手もしくは買い手のどちらかのM&A支援を行い、助言業務(アドバイザリー業務)を行う者を指します。
M&A事業者と提携し、買い手探しをサポートするという、今までなかったビジネスモデルを構築したByside株式会社では、どのような人材が活躍しているのでしょうか。アドバイザリー事業本部に入社して約1年の若手社員である古河秀鴻(ふるかわ しゅうこう)さんにうかがいました。
[プロフィール]
Byside株式会社
アドバイザリー事業本部 古河秀鴻さん京都大学経済学部卒業。新卒でM&A仲介最大手企業に入社し、M&AおよびIPOの両面から、企業の成長を支援する提案を実施。Bysideへの入社後は、マッチング~エグゼキューションまで1人で対応。IT、広告、印刷関連の業種を中心に、建設業や製造業まで幅広く担当。売上高1000億円を超える上場企業から、中小企業まで規模を問わず、成長戦略の一環としてのM&Aを提案。累計の顧客折衝数は1000社を超える。
――M&A業界へ興味を持ったきっかけを教えてください。
大学で参加していた経営戦略を研究するゼミで、M&Aに興味を持ったことがきっかけです。M&A実務については座学で理解をした後、 証券会社のM&A部門へインターン生として働き、実務に触れました。大学卒業後は国内大手のM&A仲介会社に入社し、買い手担当部門で約1年間従事しました。
――大手のM&A仲介会社を退職し、Bysideへ転職したのはなぜですか
Bysideのビジネスモデルに魅力を感じたことが大きな理由です。当社のサービスは、M&A仲介業者のために買い手を紹介し、そのまま買い手のアドバイザーとして就く、買い手専門のM&Aアドバイザリー事業です。また、すでに多くの業者様との連携がございますので、買い手企業様からすると、案件情報を多数抱えるプラットフォームのような形で、弊社を利用いただけます。これは、業界の中では非常に珍しい取り組みです。
一般的に、M&A業界に就職をすると売り手探しをメインで行います。しかし、Bysideは自社で売り手を探しません。主にM&A業者様から案件化された状態で売り手を紹介され、買い手探索の依頼を受けます。当社は、仲介ではなくアドバイザリー業務(FA業務)としてM&Aに関わっていることも特徴です。アドバイザリー業務とは、売り手もしくは買い手のどちらかについてアドバイスすることを指します。当社の場合は、買い手側に就いて、M&Aができるようサポートしているわけです。
――業界でも新しい御社のビジネスモデルへの期待は大きかったでしょうか?
はい。非常に尖ったビジネスモデルだと感じました。M&A支援機関のうち、仲介ではなくアドバイザリー業務での成約実績は譲渡・譲受ともにわずか2割にすぎません。圧倒的に仲介による成約が主流の中で、買い手に特化したアドバイザリー業務を行う当社が伸びていくのは容易ではありません。だからこそ、挑戦する価値があると感じたのです。
しかし、入社の決め手は事業内容だけではありません。川畑や現在の上席の人間性に惹かれて、「ここで働きたい」と思ったことも大きいです。川畑については、優秀なM&Aプレイヤーでもあり、憧れの存在でした。彼は野心を持って仕事に取り組む一方で、少年のような親しみやすい雰囲気も持ち合わせています。目下の人間にも気配りをして、面倒見が良い優しさもあるんです。
――誰と働くかが重要ということですね。
はい。人生で仕事に費やす時間は長いので、働く時間をいかに楽しむかを重視しています。尊敬できる人や共に働いて楽しいと思える人と、同じ目標に向かっていける環境に身を置きたいです。
――入社後はどのように実務を覚えたのでしょうか
Bysideには経験豊富なマネージャーが複数おり、彼らからM&Aの実務を学んでいます。1on1できめ細かくサポートしてくれるので、成長速度は非常に早いです。
当社には、1人のマネージャーが新人1人もしくは2人とチームを組み、教育する仕組みがあります。マネージャーはお客様との面談に同行するほか、エグゼキューションと呼ばれるM&Aの実務までサポートをしてくれます。私はBysideの教育体制は、研修医のようだなと感じています。研修医は院内のさまざまな診療科へ行き、経験を積みます。同様に、当社の新人は3ヶ月や半年など一定期間ごとに異なるマネージャーの下へ移り、新たなマネージャーから教育を受けます。このやり方のメリットは、部署内にいる全てのマネージャーから教えを受けられることです。様々な強みを持つマネージャーが育成に関わることで、新人は幅広い視点とケーススタディを学習できます。経験値を着実に上げていける環境です。
――Bysideの社内の雰囲気が気になります。
風通しはとても良いです。とはいえ、2022年にできたばかりのベンチャー企業ですから、社内のルールや仕組みは、完全に整っているとは言えません。前職の企業規模が大きく、制度がしっかりと整備されていただけに、正直に言えば、入社後にはギャップを感じました。しかし、私はそのことについてマイナスの印象を受けませんでした。むしろ、自分が会社の仕組み作りに参加できるチャンスだと捉えたんです。ミーティングでは、自分の意見を発言できますし、川畑に直接提案をすることがあります。仕組みを整えていく段階だからこそ感じられる楽しさがありますね。
――買い手専門のM&Aアドバイザリーの面白さは何ですか。
買い手の良きパートナーとして、買い手の経営戦略に関わり、買い手が描くビジョン達成の一端を担えることにやりがいを感じます。私はここに面白さを感じます。
基本的に、売り手と違って買い手との繋がりは1回の取引で終わりません。中には、5年で3社を譲受をする買い手もいます。買い手と長期的な関係を作ることで、再びM&Aに関われる可能性が高まります。これは、買い手の事業へのさらなる貢献に繋がります。そのためには、買い手の会社の方向性やビジョンを把握し「社長はどう感じるか」といった当事者意識を持つことが大切だと私は思います。「M&Aなら古河さんに頼めば大丈夫」と思われる存在を目指し、日々精進しています。
――顧客から頼られる存在になるために、何か心がけていることはありますか
信頼を得るための行動を意識しています。信頼とは、買い物の際に貯まるポイントのようなものだと私は思っています。着実に貯めるためにすべきは、相手が欲するものを提供することです。身近なところで言うと、連絡手段の選択です。電話で話すべきなのか、メールで文面で送るのが良いかを状況や相手の置かれた状況や連絡の内容に応じて、最適な連絡手段を選択します。ちょっとしたことですが、気遣いができるかが実務では重要なんです。
企業の株価や価値の算出法としてDCFと呼ばれる手法がありますが、中小企業のM&Aではあまり用いられません。DCFとは、事業計画書をみて、将来生じるリスクを割り引いて企業価値を求めることです。とある案件を担当した際、株価算定と価値判断材料の一つとしてDCFが必要だと私は感じたんです。そこでDCFを入れた資料をお送りしたところ、喜んでいただきました。買い手の社長が求めることを推し量り、先回りして提供するように努めています。
――当事者意識があるからこその行動ですね。
突き詰めると、買い手専門のM&Aアドバイザーに求められるのは人間力なんです。知識はもちろん必要ですが、後からでも得られます。実務に取り組むと、案件によって関わる企業は違いますし、知らないことに直面するのは当然です。都度、学んでいけば良いんです。多くの物事を知っていることよりも、相手の状況を理解し、心理的な距離を縮める振る舞いができる方が重要だと感じます。
――これからM&A業界で働こうとする人に向けて、メッセージをお願いします。
実力主義の世界ですから、自分の頑張り次第ではたくさん稼ぐことができます。しかし、M&Aに携わることの魅力は、収入の高さだけではありません。
M&A案件では、企業価値の算出や先のシミュレーションなどを行います。これらは論理的な視点で進めるわけですが、取引では当事者の価値観や感情も大きく影響します。実際、M&A締結のために何を優先するかは社長によって全く異なります。これが大変なところでもあり、面白い点でもあるのです。
たとえば、M&A締結のスケジュールを絶対に譲れない人もいれば、譲渡対価を重視する人もいます。何よりも、相手企業との相性を重視する人もいるわけです。したがって、M&Aの支援では定量的な数値分析だけでなく、経営者の価値観や感情といった定性的な側面も大切に扱います。当事者の心理を汲み取り、数字に表れない部分を丁寧に拾い上げて、最適なM&Aを提案する。言葉で表すのはシンプルですが、実際に行うのは簡単ではありません。しかしこれが、仕事の醍醐味であると私は感じています。
The Deals編集部
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